「炎症と組織再生」と「炎症とがん」の研究に関しては、「炎症記憶」と「腫瘍惹起性炎症」という2つのキーワードを中心に独自の視点・切り口で、炎症による組織再生メカニズムを解明によるより効率のよい組織再生方法の開発と新規がん化メカニズムの解明と治療方法の開発を目指して研究を行なっている。実験手法としては、オルガノイドとゲノム編集法を組み合わせたin vitro解析や独自のマウスモデルを用いたin vivoのなどのWet実験を得意としているが、シングルセル解析や空間的トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、メタボローム解析などの網羅解析手法(Dry解析)も積極的に導入している。
これまでは、主に肝臓や大腸などの消化器における「炎症とがん」、「炎症と組織再生」についての研究を一貫して行い、多くの研究原著論文や総説を発表してきた(Nature 2012, PNAS 2012, Cancer Cell 2014, Immunity 2014, Cell Metabolism 2014, JCI 2014, PNAS 2014, JCI 2014, Semin Immunol. 2014, Nature 2015, Cell 2015, Nature Immunology 2015, Genes & Development 2015, Cell 2016, Nature Communications 2016, Cancer Cell, 2016, Oncogene 2016, FEBS Lett. 2016, PNAS 2017, Nature Reviews Immunology 2018, PNAS 2018, Cancer Science 2019, Nature Metabolism 2020, Journal of Hepatology 2020, Molecular Cancer Research 2020, Int J Mol Sci. 2021など)。大腸の再生研究においては、炎症と組織再生をつなぐシグナル伝達経路として世界で初めてSrc family kinase (SFK)-YAP経路の発見し、大腸がんの研究においては、がん細胞自身が引き起こす腫瘍惹起性炎症の提唱し、その重要性やメカニズムを多くの実験を通して明らかにしてきた(Nature 2012, Immunity 2014, Nature 2015, Nature Communications 2016, PNAS 2017, Molecular Cancer Research 2020など) 。肝臓がんの研究においては、 独自の非アルコール性脂肪肝炎からの肝細胞がん(NASH-HCC)マウスモデルの樹立やそのマウスモデルを用いてp62タンパク質の重要性やフルクトースがどのようにNASH-HCCを促進するかなどを明らかにしてきた(Cancer Cell 2014, Cancer Cell 2016, Nature Metabolism 2020など)。さらに肝臓において新しいタイプの幹細胞(Hybrid hepatocytes)を世界で初めて同定して報告した(Cell 2015)。