名古屋大学大学院医学系研究科・特任講師の小嶋泰弘先生による第2回 分子病理学教室セミナー「深層生成モデルによる一細胞・空間トランスクリプトームの解析」が開催されました。

小嶋先生、最先端の手法をわかりやすくご講演いただき、ありがとうございました。

演題：深層生成モデルによる一細胞・空間トランスクリプトームの解析                                                                                                                  

要旨：近年技術的な発展の著しい深層学習技術は、科学の諸分野に大きな影響を及ぼしている。生物学においても、AlphaFold2によるタンパク質構造の予測にとどまらず、一細胞オミクス解析データからの知識抽出においても大きな効力を発揮している。特に深層生成モデルと呼ばれる確率モデリングとの融合技術は、細胞の潜在的な状態を確率的に推論することを可能にし、既存のリファレンスデータとの統合的な解析や、疾患等のデータセットにおける新たな集団の同定を効果的に行うことができることが示されている。その一方で、これまでの方法では、疾患特異的な細胞状態を特定しその分子的特徴づけを可能にする一方で、そのような集団がどのようなプロセスを経て誕生するか、その成因を体系的に明らかにすることは困難であった。本セミナーにおいては、スプライシング数理モデルとの融合により細胞状態の条件依存的時間変化を推定する的手法、並びに空間トランスクリプトームとの統合により共局在関係を推定する的手法を紹介する。これにより、疾患等により生まれる細胞集団が形成される過程を時間的変化、細胞間相互作用の観点から明らかにするアプローチの可能性を検討する。